その昔、まだ昭和と言われていた頃の日本では、土地を買っておけばいざというときの頼みとなった。困ったときには土地を売る。しかもそれは買ったときよりも数倍高く売れるから、売らなくても担保にすれば銀行はお金を貸してくれた。日本の場合、土地は住むための土地ではなくて、転売するものだった。これはマンションでも同じことだった。となると奇妙な事態が生じた。マンションなり土地なりを買うのは、そこに楽しく住むというよりも、次に売るためなのである。人間が空間を所有することに執着するのは、自分の縄張りを確保したいという意味があり、生物の基本的な欲求に関わる。それをいちいちお金に換算しないと分からないというのでは、現代人の生物的な本能か薄められているためかもしれない。いつのまにか、日本人は土地、家屋、すなわち空間を、経済の論理からだけ見る習慣にどっぶりつかってしまった。
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